2023/03/12 12:32


こんにちは!
二〇二三年二月に、福岡県福岡市で活動する社会人文芸サークル「さきがけ文学会」の代表のゆうやさんとお茶をした際、「新人賞を取っても作家は文章で食べていけない環境にある」という話題になりました。


面白い話を聞かせてもらったので
今回は趣向を変えて
相談に答える話ではなく

「新人賞を受賞した新人作家のその後」

についての話をしてみましょう。


代表の話によると
たとえば、新人作家が出版社から本を出す場合、不可抗力的な事情から作家が自力で売っていかないといけないそうです。だから死に物狂いで賞金を狙い、イベントにも出る。


「賞金を狙う」

という点では
たとえば詩歌の人に当てはめると、新人賞の代表例である「中原中也賞」(山口県山口市)では副賞に一〇〇万円が贈呈されます。それを「不可抗力的な事情」を解決するために使うのです。


「イベントに出る」

という点では
たとえば「文学フリマ」というイベントを聞いたことはありますか?

以前、ブログ上に公開した「文学フリマのすすめ〜文学が面白いと思うすべての人へおくる〜」の中でも紹介した文芸同人誌の販売イベントです。上記のブログに大まかな説明を書いているので一部引用します。


▼文学フリマとは
ーー既成の流通システム、もっと言えば既成の文壇や文芸誌の枠にとらわれない市場のことであり、そこでは出店者(作家)と、来場者(客)が直接やり取りできます。お客さんの入場は無料、作家から一ブース五〇〇〇円程の出店料を集めることで成り立っています。ここで言う「文学」とは「自分が文学と信じるもの」であり、販売される本は、さまざまなジャンルや文章で書かれた、作家それぞれが思う「文学」の形です。ーー


つまり、各々の作家が好きなように「文学」の本を販売して良いというイベントなのです。
じつはここにはアマチュア作家だけではなく「新人賞受賞作家」が出店していることが珍しくありません。


「販売は担当編集者や営業がやるんじゃないの?」
「全国の書店に置かれるから文学フリマに出なくてもいいのでは?」
「印税生活を送って楽しんでいるんじゃないの?」


と思うかもしれませんが
出版本を自力で売っていかないといけないという新人作家は割と多いようです。「イベントでの出店販売」には、著者から直接買うことができるという付加価値をつけることで、本の売上をあげたいという意図があります。これにより先述した「不可抗力的な事情」を解決させるそうです(お客さんとの直接交流が好きだから参加しているという作家もいるはずだと私は思いますが)。



そのため、代表のゆうやさんは「(人前に出るのが苦手な人でも)文章を書く人が食べていける環境があった方がいい」と言います。



じつは、ゆうやさんは二〇二三年にさきがけ文学会刊行の『蘖-ひこばえ-第11号』に「私が文芸同人誌を作る理由(わけ)」というエッセイを書いており、その中で、文芸同人誌の世界には「文芸同人誌の安全基地」というものが必要だと自論を述べていました。もしかしたら、この「安全基地」には「文章を書く人が食べていける環境をつくりたい」という意味合いが一つあったのかもしれない、と今振り返ってみて、読者としての私は思っています。違うかもしれませんが。


私も文芸同人情報誌を書く人間なので、文芸同人の「環境」については割と考えているほうだと自負していました。しかし、受賞後の新人作家の「環境」についてはあまり考えたことがなかったので、ゆうやさんから色々な意見が聞けて大変勉強になりました。



さて、ここまでは「(新人作家ではなく)新人作家が食べていくための環境をつくる」側の話をしてきました。
しかし、多くの文芸同人は「新人作家」になったあと何をすればいいのか、つまり「どうすれば文章を書いて食べていけるのか?」という話が聞きたいと思います。

この問題を考える上で参考になる本があります。

中山七里/知念実希人/葉真中顕著『作家 超サバイバル術!』光文社刊(二〇二二年一二月発行)という本です。アマチュア作家ではなく、新人賞等を受賞した新人作家向けに商業作家の稼ぎ方やリアルな収入額、映像化の話など主に「稼ぐ」ことに焦点を当てて書かれた本になります。この本によると、最近は各出版社が主催する文芸新人賞は増加を続け、中央の有名なタイトルだけでも毎年二〇人以上の新人作家がデビューしているそうなのですが、業界では「五年生存率」という言葉があり、五年先まで生き残れる(リアル書店の平台に本が並ぶ)新人作家はほぼいないそうです。


読書人口が減少中の日本では
それが現実なのかもしれませんね。
作家はより生き残りを意識した
働き方(書き方)が必要になるのでしょう。


そのためにも
新人作家向けのハウツー本を読むことは案外アリなのかもしれません。


ぜひこちらの本
おすすめします。
また、ハウツー本としてだけでなくエッセイ本としても楽しめる文章ですので、新人作家の茨の道を覗き見てやろう!という気分で読むのもきっと楽しいですよ👍



追記

【この本の
レビューコメント
見てみました】

hontoやBookLiveのレビューは良好ですが、Amazonレビューには手厳しいものが一部あり。批判的な意見を要約すると、ハウツーとして読む人にとっては個人の体験談にしか聞こえず参考にならないという内容です。人によっては読後感の分かれる本のようですので、読む際にはハウツーとエッセイの中間の本だと思って読むほうのが良いかもしれません。



追記の追記

葉真中顕さんが『作家 超サバイバル術!』の中の「作家と執筆スタイル」という見出しの文章で「身体に合ったよい椅子を買え」と書いていました。

そのため
私、買ってきました❗️
一万八〇〇〇円のソファー椅子❗️




座り心地抜群です。ずっと座っていても体が痛くなりにくく疲れません。これによって執筆時の身体的負担が軽くなリ集中しやすくなりました。
考えてみれば、ゲーマーの人がゲーミングチェアを買ってゲームに集中できる環境を準備するように、文芸同人の人がよい椅子を買って執筆に集中できる環境をつくることは、当然やるべきことだったように思います。文芸同人を続ける中で目の前の執筆に気をとられ「執筆に集中できる環境を準備すること」を忘れていました。

皆様もぜひ、ここは一つだまされたと思って『作家 超サバイバル術!』のアドバイスに耳を傾けてみてはいかがでしょうか?