2023/11/11 09:48

福岡県にある万葉集ゆかりの地・太宰府で行われる「筑紫歌壇賞贈賞式」に参加しました。


ここに来た理由は一つ。

伊藤一彦先生の
シンポジウムを
拝聴すること!!

(あと選者賞をいただいたこと)


▲太宰府天満宮の表参道


伊藤一彦先生は筑紫歌壇賞の選考委員をつとめる歌人でありこの賞を創設時から支えている人物です。

読んでいる本の著者に直接会う喜びは一際でしたよ。


▲シンポジウムの登壇者は左から伊藤一彦先生、小島ゆかり先生、山下翔先生、桜川冴子先生


今回は第二〇回と第一九回の受賞者お二人が壇上に相見えての式典でした。両人とも短歌結社「心の花」の歌人。短歌を創作する人にとっては眩しい限りの御受賞ですね。誠におめでとうございます。


用語解説
短歌結社
短歌を創作する会のことを俗にこう呼ぶ(決して地下組織のようなものではない)。明治期の郵便制度の普及とともに広まり、現在に至るまで短歌を創作したい人が多数入会している。それ以前は弟子が師匠の元に通って短歌を学ぶというような「門人制度」の形が基本だったが、短歌結社では結社誌(短歌結社が刊行する短歌雑誌)への投稿や定期的な集会を通して短歌を学ぶという形が基本になる。現在もこの形が主流になるが、最近は短歌結社のあり方が変わってきており、郵便からインターネットによる結社誌への投稿、集会の開催に移行しつつある。


会場では懐かしい先生や歌友の先輩にもお会いできてうれしかったです!!

以下、見出しの内容ごとに出来事を振り返ってみたいと思います。



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“六〇歳以上の歌人”
その短歌の魅力とは?
シンポジウムのまとめ


▲短歌結社「心の花」福岡歌会から受賞者へ「博多織」の贈呈


シンポジウムのテーマは「筑紫歌壇賞二〇年をふりかえる
筑紫歌壇賞は六〇歳以上の人の第一歌集が選考対象の短歌賞です。賞の名前の由来は太宰府ゆかりの万葉歌人大伴旅人、山上憶良がいわゆる「筑紫歌壇」を形成して活躍した時期がともに六〇歳代だったことからきています。

シンポジウムでは第一回から第二〇回の筑紫歌壇賞受賞作の短歌を抄出したレジュメで当時をふりかえりながら、受賞者たちのエピソードや人物像などが語られました。年長者だからこそ詠める短歌の魅力を感じるお話が多くとても面白かったです。

覚えている限りにはなりますが、シンポジウムで話されていた"六〇歳以上の短歌の魅力"を箇条書きでまとめてみました



・親、子、孫などいろいろな世代にふれた短歌が詠める

四〇年、五〇年という長い期間から過去をふりかえることができる(二〇〜三〇代はせいぜい学生時代まで。学生時代はみんな似たり寄ったりな生活空間を過ごしているため年長者よりも個性が出にくいという考察もあった)

・歳を重ねた人の短歌には若者に出せない独特のユーモアがある

・歳を重ねることで「自我」から自由になれる。歌に涼しさが感じられるものが多い。そういう面から"歳を重ねた人の独特のユーモア"が出てくるのではないか

・仕事を詠んだ短歌には何十年も勤めあげてきた時間の存在、時間の重みが感じられる

・(よろよろとした)老いた自分を冷静に見つめる目が短歌から感じられる(桜川冴子先生は馬場あき子先生から「老いる人には周りから呆れられることが逆に励みになってがんばれるという境地がある」という話を伺ったことがあると仰っていた)

自分の歴史(タテ糸)と社会のこと(ヨコ糸)をどう組んで詠むか。そういう発想が第一回から第二〇回までの筑紫歌壇賞二〇年間の短歌をふりかえってみて見ることができた



歳を重ねることで短歌の魅力が増えるというお話は、歌人にとっていつまでも短歌を続けていこうという励みになりますね。私もあと三五年くらい経ったらこういう短歌を詠める日が来るのかもしれません。その日を楽しみにして短歌を続けたいですね。


桜川冴子選者賞
をいただきました
記念に素敵な歌集も!!


▲選者賞の記念にいただいた桜川冴子先生の『さくらカフェ本日開店』本阿弥書店刊


私事ですが、筑紫歌壇賞贈賞式の詠草で桜川冴子先生の選者賞をいただきました。
式典に花を添えられた気がしてうれしかったです。

選者賞の記念品は桜川冴子先生の『さくらカフェ本日開店』本阿弥書店刊。誠に光栄です。山口県での読書会イベントで仲間内に紹介したところ大変盛り上がり楽しかったですよ。

読書会では私と市立中央図書館の館長から著者のユーモアが光る二首を発表しました。


未婚なるわれは夢にても一人なり目覚めてぬるくひとり笑ひす
「ラボラトリー」より

馬場あき子の隣に座る二次会にお辞儀の練習させられてをり
「握手」より


短歌結社の垣根を越えた交流‼️受け継がれる「筑紫歌壇」の気風


▲筑紫歌壇賞贈賞式会場の太宰府館。心の花、しらぬひ会、未来短歌会など複数の会があつまる


会場にはいろいろな短歌結社や短歌会の人がお越しになり贈賞式の開催を見守っていました。懐かしい方々にお会いできて嬉しかった中で、特に再会できてよかった相手は短歌結社「未来短歌会」の福岡歌会代表 恒成美代子先生でした。

じつは私が初めて参加した短歌結社の歌会が恒成先生の福岡歌会でした。県外から歌人を招いての大人数による歌会であり解散後のビール工場での飲み会も賑やかで、とても楽しかった思い出です。その後、私は別の短歌結社である「心の花」に入会。それ以来先生とはお会いする機会がないまま過ごしてきました。

ご挨拶ができて本当に良かったです。この贈賞式の数日後、恒成先生からお手紙をいただきました。



『心の花』で作品を休むことなく出し続けてほしいです



というようなメッセージが。別の短歌結社であっても短歌の創作に一層励むように背中を押してくれました。うれしかったです。

贈賞式から帰る途中
もう一人、昔からお世話になっている先輩歌人に再会しました。
「なぜ心の花にまだ居るのですか?」
と会話の中で尋ねられました。彼女も別の短歌結社に所属する歌人でした。



佐佐木幸綱先生の短歌が好きだからですね



私はそう答えました。

もちろん「心の花」で色々な人とのよき出会いも経験してきましたが、一つだけ理由を選ぶなら「好きな短歌を詠む人がいるから」ということに尽きます。幸綱先生は「心の花」で編集人をなさっている人物です。

好きな短歌に憧れる心さえあればどんな短歌結社の人も歓迎してくれます。そして別々の短歌結社にいても応援してくれます。

福岡県には若い歌人や文芸同人のコミュニティが多く、山口県に住む私から見たら羨ましく感じます。それは位の高い低いを越えて交流しあう「筑紫歌壇」の先人たちや、会の垣根を越えて支えあう短歌結社等の先輩たち余沢にあずかった結果なのかもしれませんね。



もしも
好きな短歌が胸にあり短歌を創作してみたいという人は、その歌人のいる短歌結社に足を運んでみることをおすすめしますよ。



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カフェ巡りのすすめ
太宰府でひと休み☕️


▲福岡市の博多バスターミナルからのバスが停車する太宰府駅前


万葉集ゆかりの地・太宰府市ですが、遠方から遥々きていた歌友の先輩のなかには、太宰府市には贈賞式会場の太宰府館と太宰府天満宮にだけ行き、短歌関連の観光は主に福岡市で済ませたという人がいました。

確かに飛行機や新幹線で太宰府市に行くとしたら必ず経由するのが福岡市。
もちろん太宰府市は短歌関連の観光地として魅力的ですが、交通の便もよく文学関連の場所も密集している福岡市で遊び、そのあと太宰府市に行くという人もきっといるのでしょう。


では、イベントの参加のために太宰府市に来た人たちは何を求めているのか?


開催時刻になるまで
ゆっくりくつろげる
「太宰府市のカフェ」
ではないでしょうか。

そこで今回は太宰府天満宮表参道のカフェを五軒紹介したいと思います。


「風見鶏」
元旅館のレトロなカフェ


▲ストロングコーヒー(深煎り)とレアチーズケーキのケーキセット


和風な外観とは裏腹に、洋風な装飾品にあふれる店内が素敵です。表参道のカフェの定番という印象があります。

レアチーズケーキのケーキセットを注文。洗練された器やデザートもいいですが、特に目を引くの古風な制服を身にまとったウェイトレスの姿。気品あふれる佇まいと接客に心も和みます。

ふと、伝票の裏をみると珈琲にまつわる格言集が。粋なこだわりも感じさせる素敵なカフェですよ。


「自家焙煎珈琲 蘭館」
人混みを離れて自家焙煎のお店へ


▲水出しアイスコーヒー


線路沿いに歩くと見えてくる自家焙煎珈琲のカフェ。表参道をすこし離れれば、観光客はほとんど居なくなったと感じます。

店内には若い夫婦が赤ちゃんを連れてきたり、常連客らしいご婦人がカウンターで店主と話し込んでいたりとご近所の方がよく訪れるカフェという印象がありました。

ここでは水出しアイスコーヒーを注文。紙ストローをつかうカフェは、チェーン店以外だと初めてなのですが、スターバックスコーヒーの他にも普及しているのですね。環境に優しいお店にいると客の心も優しくなりそうです。


「維新の庵」
造花と中庭と抹茶のある和風カフェ


▲かき氷(みつかけ)のホワイト(みぞれ)、抹茶冷と梅ヶ枝餅セット


駅前にある和風カフェ。店頭で梅ヶ枝餅を販売しており、店内でも抹茶と梅ヶ枝餅をセットで味わうことができます。

店内に入り驚いたことは、大きな造花と中庭がある「和」の雰囲気です。古民家などをリノベーションしたお店は都会風な内装や洋風なカフェメニューを整えて「和」の雰囲気の逆をいくパターンが多いという印象が私にはあり、個人的に表参道のカフェの多くはそのタイプのように見受けられました。しかし、和風なカフェも表参道にはあるのですね。

注文した品は可愛らしい造花に彩られて美しかったです。ちなみにメニューには珈琲やメロンソーダなど他にも色々ありますので是非楽しんでみてください。


「CAFE COCCOLO」
本格派の洋食ランチ


▲ランチメニューのスパイシーカレー


筑紫歌壇賞贈賞式会場の太宰府館から徒歩一分の古民家カフェ。イタリアンとフレンチをベースにした洋食ランチが楽しめます。

当日のお昼のランチセットにはハンバーグとスパイシーカレーと本日のパスタの三種類が選べました。私はスパイシーカレーのセットを。柔らかく煮込んだ豚肉はおいしく、カレーのルーは食べた感じ牛煮込みベースのようなコクを感じさせる味わいでとてもおいしかったです。

前菜のサラダと食後のデザートも洗練された盛り付けで美しく、おいしくいただきました。

会場近くでのランチに、ぜひおすすめです。


「スターバックスコーヒー太宰府天満宮表参道店」
朝八時に太宰府に着く人へ


▲有名建築家 隈研吾さんの設計による美しい木組み構造のデザイン


「朝八時に太宰府駅に着いたけど移動で疲れた。ひと休みしたいけど開いているカフェが無くて困ったなあ」
という、あなた。
スターバックスコーヒーは朝八時から開店していますよ。駅から徒歩五分。

有名なチェーン店ですから人が多くて常に満席のように見えるかもしれませんが、じつは多くの人は持ち帰り客のため意外と空席があるものです。

私のおすすめポイントは広い空間のバリアフリートイレ。どんな人にも使いやすい設備があることは大切ですね。



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  参考
筑紫歌壇賞贈賞式 & 天満宮表参道のカフェ巡りにかかった
Money「お金」
Time「時間」
Access「移動手段」
を公開します


▲短歌結社「心の花」をはじめ多くの会や歌人たちが筑紫歌壇賞の受賞を祝福した


私は福岡県のお隣の山口県に住んでいます。そこから福岡県太宰府市に到着しカフェ巡りをした後に大会会場へ。その合計出費と時間割を公開します。

太宰府天満宮表参道のカフェ巡りの際にはぜひ参考になさってくださいね!!


訪れた場所

お店
スターバックス コーヒー 太宰府天満宮表参道店
風見鶏
自家焙煎珈琲 蘭館
維新の庵
CAFE COCCOLO
短歌関連の場所
太宰府館


時間割と移動手段

行き 新山口駅出発
9月18日07:10※駐車券発行の時刻
(新山口駅前の駐車場到着)
帰り 新山口駅到着
9月18日19:00※駐車券のレシート発行の時刻
(新山口駅前の駐車場到着)
山口から太宰府へ
・自宅→新山口駅(車・駐車場に停める)
・新山口駅→博多駅(新幹線)
・博多駅→博多バスターミナル(徒歩2分)
・博多バスターミナル→太宰府駅前(バス)
太宰府
・太宰府駅前→スターバックス コーヒー 太宰府天満宮表参道店
 滞在09:40 - 10:05
・スターバックス コーヒー 太宰府天満宮表参道店→風見鶏
 滞在10:10 - 10:45
・風見鶏→自家焙煎珈琲 蘭館
 滞在10:55 - 11:35
・自家焙煎珈琲 蘭館→古民家カフェひとひら※営業していなかった(徒歩25分)
・太宰府駅前まで歩く
維新の庵
 滞在12:00 - 12:30
・維新の庵→CAFE COCCOLO
 滞在12:35 - 13:20
・CAFE COCCOLO→大会会場の太宰府館(徒歩1分)
・第20回筑紫歌壇賞贈賞式及びシンポジウム
太宰府から山口へ
・太宰府館→太宰府駅前(徒歩2分)
・太宰府駅前→博多バスターミナル(バス)
・博多バスターミナル→博多駅(徒歩2分)
・博多駅→新山口駅(新幹線)


合計出費:19,352円

この「表参道のカフェ巡り」は太宰府天満宮で出来ることをいろいろやり尽くした先の「楽しみ方」です。私は高校の友人との文学旅行、年末年始の参拝、厄除祈願のお払いなど…計三〇回以上は太宰府天満宮を訪れているでしょう。そんな私だからこそカフェをあちこち巡ってみるというマニアックな楽しみ方を実行できたと言えます。もちろん素敵なカフェはたくさんあり楽しく過ごせますが、はじめて太宰府天満宮を観光なさる人には、まず天満宮への参拝や短歌関連の観光をメインに歩いていただき、そののちにカフェに立ち寄ってみることをおすすめします。



▲短歌結社「心の花」が毎月刊行している結社誌『心の花』の一五〇〇号記念号。今年で創刊一二五年になる。二〇二三年一〇月には第四六回現代短歌大賞の特別賞に決まったことが発表された


いかがでしたでしょうか?
ぜひ短歌関連の観光と
カフェ巡りの際には

太宰府へ

お越しになってくださいね。


また、もしも好きな短歌が胸にあり短歌を創作してみたいという人は、その歌人のいる短歌結社の結社誌を読んでみたり短歌結社のWebサイトを覗いてみたりするといいですよ。