2023/07/05 21:49

静岡県の温泉地「熱海」で行われる第49回佐佐木信綱祭短歌大会に参加しました。


大会に参加する理由は一つ。

歌人・佐佐木幸綱先生の
存在を確認すること!!!

(あと選者賞佳作をいただいたこと)

▲佐佐木信綱先生旧居「凌寒荘」前にある歌碑。短歌「願はくはわれ春風に身をなして憂ある人の門をとははや」


幸綱先生は佐佐木信綱先生の孫にあたる人物であり短歌雑誌『心の花』の編集長をなさっている歌人です。幸綱先生の短歌は私の憧れでした。


会場の「起雲閣」にて幸綱先生の講評などを拝聴。本の中でしかお人柄を知らなかったのでお話を聞けて大変感激しました。終会後に歌友の先輩から促され幸綱先生に「『作歌の現場』読みました!感動しました!」と御挨拶。慌ただしい様子でしたのですぐに退場されてしまったのですが去り際に「がんばってね」と言ってもらえたこと、大変励みになります!!(…次会う時は落ち着いて話そう)


▲幸綱先生と今大会の選者の先生方。左の御写真は佐佐木信綱先生


また、大西久美子先生をはじめ選者先生達の興味深いお話と講評。そして関東圏の心の花の歌友谷岡亜紀先生を囲む宴。すべての時間が本当に楽しかったです!!


そして二日目
佐佐木信綱先生の旧居である「凌寒荘」へ。

管理人の御二人には住居やお庭、童謡「夏は来ぬ」、凌寒会、万葉集所縁の庭木など貴重なお話を、一時間近くに渡って聞かせていただきました。


お会いした皆様
本当に有難う!!


以下、見出しの内容ごとに当日の様子を振り返ってみたいと思います。



——————

関東圏の心の花の歌友との交流
そして谷岡亜紀先生を囲む宴


▲熱海駅前すぐのアーケード


じつは関東圏の心の花の歌友との交流は、最初から予定されていた訳ではなく大会で偶然隣の席になったMakiさんからメールをいただいたことで有難くご相伴に預かりました。同世代の歌人と話せてとても楽しかったです。

私の住む山口県には短歌の話題がほぼ無いため、熱海で歌友と過ごし、本来の自分に戻れた気がしました。


二軒目の居酒屋では谷岡亜紀先生と合流。
評論での理知的な印象とは違い、宴では明るく面白いお人柄に大変驚きました。久しぶりに沢山沢山笑って楽しかったです。


選者先生の評論・講評は私にとって歌の道標。私の及ばぬ点まで広く深く考察なさっていて大変勉強になります。気を引き締めて今後も短歌をがんばります!!



大西久美子先生の講演
「佐佐木信綱の心に吹く自在な風」


▲会場の「起雲閣」にある一部屋「サンルーム」の天井


大西久美子先生の講演も興味深く、佐佐木信綱像を多角的に知れる内容でした。今まで信綱先生のことは正岡子規の「獺祭書屋俳話」、斎藤茂吉の「金槐集私鈔」でお名前を少し知っているという程度の知識でしたが、変わりゆく国家の様相を正視する姿勢が短歌から感じ取れました。


じつは大会後に訪れた凌寒荘(佐佐木信綱先生の旧居)で幸綱先生の「信綱と外国語」という文章を発見。信綱先生のことをもっと知れると思い読んでみると、信綱先生は孫らに「外国語の勉強をなさいまし」といつも言っていたという話が書かれており、当時の日本人の例に漏れず西洋文化に関心をもつ一人だったと知りました。
そして外国語への執着心も。


「獺祭書屋俳話」「金槐集私鈔」「信綱と外国語」そして大西先生の講演を合わせて考えることで信綱先生の性格がより立体的に見えたと思います。
再び熱海に行くなら、石垣書店の店主に教えてもらった信綱先生の寄贈本があるか、熱海の図書館を訪ねてみたいですね。信綱先生の性格を蔵書の種類から探ってみたいと思いました。



石垣書店の店主に見せてもらった
『熱海温泉誌』のなかの
佐佐木信綱先生


▲JR熱海駅。新幹線にも乗れるためアクセス良好


熱海の町歩きの思い出として色濃く残るのは、駅前のビルの中に店を構える「石垣書店」さんです。


「佐佐木信綱の本はありますか?」
石垣書店の店主にそうお尋ねしたところ、店の展示用のガラスケースから『熱海温泉誌』を出し信綱先生の項目を見せてくれました。


信綱先生について店主は校歌作詞だけでなく「蔵書寄贈」など熱海に貢献した人だと親切に教えてくれました。有難いことです。もしそうなら熱海の図書館には信綱先生の寄贈本の分類があるはず。今度は図書館にも行ってみたくなりました。


「ここで読んでしまっていいからね」
と言われ、ご好意に甘え立ち読みをさせていただきました。

信綱先生の頁には、新聞部に所属する中学生数名(記憶が曖昧ですがおそらく熱海市立熱海中学校の生徒)に囲まれて書斎の机の前に座る信綱先生の御写真がありました。記事文には昔の熱海市立熱海中学校の校歌を作詞したことなどの業績や、新聞部の中学生からの取材に丁寧に受け答えする様子などが伝えられていました。



▲『市制施行八〇周年記念 熱海温泉誌』2017年4月、出版文化社刊



信綱先生作詞の童謡

「夏は来ぬ」

みんな歌えるらしい


▲凌寒荘(佐佐木信綱先生の旧居)のお庭から見た室内の展示。当時は部屋の至る所に蔵書が積まれていたそうだ


大会の進行で最も驚いた一幕は閉会に差し当たって童謡「夏は来ぬ」を合唱する時間でした。私があまり司会者の声を聞いていなかったものですから、唐突に曲が流れ、会場にいたほとんど全員が躊躇うことなく歌い始めたときには驚きました。

「今何をすればいいですか?」

と隣にいた歌友の先輩に尋ねると「私もわからない」と言われ、大会パンフレットをめくって考えているうちに童謡「夏は来ぬ」の歌詞の頁を発見。戸惑いながらも合唱に従い、なんとか歌うことができました。


じつは二日目に訪れた凌寒荘(佐佐木信綱先生の旧居)の管理人の御二人に大会での合唱の話をすると「私70になるけど、この年代の人はみんな歌えるわよ」と教えてくれました。本当に有名な童謡らしく、御二人からは会場の皆が歌えるのも納得という反応が返ってきました。

これは紛れもなく私の勉強不足。

信綱先生の足跡をもっと勉強しなければと思いました。



文人たちが集った
「起雲閣」
谷崎潤一郎がここで鼎談を!?


▲三大文豪による文芸鼎談があったという部屋「玉渓」


私は谷崎潤一郎が好き。だから起雲閣を観覧していて驚きました。

谷崎潤一郎
志賀直哉
山本有三

による文芸鼎談があったそうです。

これにはテンションが上がりました。部屋は「玉渓」。昭和23年3月15日のことだそうです。


起雲閣の庭園で撮られた三人の御写真からは三人のダンディーな容姿と下駄履き姿というアンバランスな佇まいを見ることができます。珍妙ながらもどこか素敵な御写真でしたよ。ちなみに、志賀直哉と山本祐三は洋装でしたが、谷崎潤一郎は旦那風の和服姿


やはり谷崎潤一郎は和服が似合う、と再確認できました。熱海の文学史の一端を知ることができる起雲閣。ぜひ皆様も行ってみてくださいね。



お宮の松像
尾崎紅葉『金色夜叉』の聖地!!!


▲尾崎紅葉『金色夜叉』を記念した「お宮の松」像。熱海駅近くの海岸沿いにある


雨の中を海岸まで行き海沿いを歩いていると見つけました。お宮の松・金色夜叉の碑。

この尾崎紅葉の小説から熱海の名は世に知られることになりました。今の熱海の賑わいはこの小説から始まったのかもしれませんね。



  参考

熱海旅行一泊二日

私の旅行にかかった

Money「お金」

Time「時間」

Access「移動手段」

を公開します


▲賞状のことを忘れて帰ろうとしたのはいい思い出


私は山口県防府市に住んでいます。本州の最西端にある県です。そこから中部地方の静岡県熱海市へ。その合計出費と移動手段と時間割を公開します。

熱海への文学旅行の際にはぜひ参考になさってくださいね!!


主に訪れた場所

佐佐木信綱先生ゆかりの地
・起雲閣
・凌寒荘(佐佐木信綱先生の旧居)
尾崎紅葉『金色夜叉』ゆかりの地
・お宮の松像
食べ歩きをした場所
・熱海駅周辺


時間割と移動手段

行き 新山口駅出発
6月10日06:11※駐車券発行の時刻
新山口駅前の駐車場到着
帰り 新山口駅到着
6月11日19:51※自前のメモより
(新山口駅前の駐車場到着)
1日目
・自宅→新山口駅(車・駐車場に停める)
・新山口駅→熱海駅(新幹線)
・熱海駅→大会会場の起雲閣(徒歩約20分)
・飲み会 ※谷岡亜紀先生と歌友と🍶
・飲み会した居酒屋→ホテル(徒歩約10分)
2日目
・ホテル〜お宮の松像(徒歩約10分往復)
・ホテル→凌寒荘(佐佐木信綱先生の旧居)(タクシー790円)
・凌寒荘(佐佐木信綱先生の旧居)→来宮神社前のバス停(徒歩約5分)
・来宮神社前のバス停→熱海駅(バス260円)
・1日100円の荷物預け所に荷物を預け熱海駅周辺を食べ歩く
石垣書店 ※熱海駅前のビルの中にある書店
・熱海駅→新山口駅(新幹線)
・新山口駅→自宅(車)


合計出費:59,502円

私の旅行は基本的に経済合理性至上主義。時間の節約と体力の温存のためには出費を惜しみませんが、新幹線ならグリーン車ではなく普通車を、ホテルなら豪華ディナー付き洋室ではなく素泊まり和室を、というように適度にケチります。移動手段とホテルの選択にはJTBの旅行プランを利用し、熱海駅徒歩15分の場所にあるホテルの素泊まりプランを選びました。旅行プラン代金以外にも飲食代(お食事処 祇園の漬けマグロ丼1,650円やカフェ プランタンのポークカレーセット1,550円、カフェ ド シュマンのアイスコーヒーとチーズケーキ1,045円、歌友との飲み代、自動販売機の利用、新幹線内のフードサービス等も計算済み)、移動費、入館料、荷物の預かりサービス料、駐車料金、雨のため買った折り畳み傘1,754円などなども含めて59,502円。

「大人の男一人分の全出費」
この値段。


いかがでしょうか?
思ったより…


安い! 行けそう!

熱海との心の距離が

グッと縮まりませんか?




皆様。
文学旅行をしたいなら

熱海へ。

ぜひご検討くださいね!


▲山口県の新山口駅前にある「俳人・種田山頭火」像


熱海もいいけど山口も楽しいですよ!ぜひ熱海だけでなく山口にも遊びに来てもらえると幸せです。