2022/12/03 14:33


こんにちは。
じつは文芸誌の編集委員から質問を受けたため
私なりの回答を皆様に共有したいと思います。

「同人誌の価格は

 いくらにしたらいい?」


その同人誌は、ある施設で創刊予定のものでした。

その施設では複数の創作系サークルや読書系サークルが毎月活動しており、地域のカルチャーセンターのような役割を担っていました。今回、その中のいくつかの創作サークルに声をかけて、20〜30人ほどの参加者からなる文芸同人誌をつくることになりました。

その文芸同人誌とは、一人一作品を投稿する合同作品集のような形です。文芸同人誌ではよくある形ですね。これを販売して印刷費の元が取れるようにしたいそうです。


私は「高い価格」にするように勧めました。


同人作家の中には
高い価格だと売れないから安い価格で売って少しでもお金を回収しよう、と考える人もいるでしょう。それも戦略の一つです。

しかし、今回は違います。
たとえば、自分や友達、感じの良い知人が関わっている同人誌なら買おうと思いますよね。私たちは高い価格でも一冊あるいは数冊を買います。なぜなら、文芸誌を買うかどうかは、文章以外の価値で決まる側面が大きいからです。


つまり
「関係者が買ってくれるから元が取れる」と考えました。


その後、この文芸同人誌は
強気の価格で販売されることになりました。
私と同じ考えの人が編集委員に居たのでしょう。


これは余談ですが
じつは相談者には話さなかった
もう一つの理由があります。

それは

適正価格の普及

です。

「文芸」ジャンルを一つの「市場」として見た場合、適正価格の普及は職業作家や同人作家が損をしないために必要なことだと言えます。

たとえば
ミュージシャンの収益。それは少数のコアファンが支える仕組みです。非ファンには無料のYouTube動画や楽曲などで好きになってもらい、やがてファンになってもらう。職業作家も同じような仕組みです。たとえば、彼らはイベントでパフォーマンス(朗読や講演など)を見せて、イベント後に物販で本などを買ってもらうということをします。

非ファンはイベントを見て帰りますが、コアファン(あるいはパフォーマンスを見てファンになった人)は本を買います。サイン欲しさにもう一冊買ったり、声をかけたくて本を買いに来たりする人もいるでしょう。
つまり、物販で稼ぐのです。

(とはいえ、直木賞作家の佐藤愛子先生の例のように、昔の日本は作家の講演会が多く、講演料をたくさんもらえたから、原稿料よりもそれで稼ぐことができた、という例もあります)


そのため
安売りの流れはなるべく止めたかった。適正価格でお金を取ったほうがいい。そうしないと作家たちの損が大きくなるからです。これは同人作家にも言えることです。

もちろん
今回の文芸誌では、話を聞いて、見込み客が多そうだったため、これなら高い価格でも行けると判断しています。


いい人たちが関わった文芸誌ですから
いい本になっているに違いありません。

だから安売りするなんてもったいない!

無理をしないで、堂々と売りましょう。